「おれたちういるすPROJECT」誕生ストーリー

25 February 2021

「おれたちういるすPROJECT」誕生ストーリー

今回のSTORIESは、2020年秋にスタートした「おれたちういるすPROJECT」の誕生秘話をお届けします。

「おれたちういるすPROJECT」は、子どもたちへのウイルス感染予防の理解促進を目指し、手洗いの大切さを啓蒙しているプロジェクト。ウイルスの特徴を捉えたユニークなキャラクターたち、小島よしおさんが歌う楽しいテーマソングとアニメーション、30秒で消える「POCKET SOAP」の発売などなど、幅広く活動している当プロジェクトを代表して、クリエイティブディレクターの伊藤裕平に、これらの裏話を聞いてみました。

1通のメールに、有志が集まった

Q. 「おれたちういるす」のアイデアはどのように生まれたのですか?

CCOのカズーさんから送られてきた、1件のメールがきっかけです。日本でコロナによる影響が出始め、リモートワークが始まったばかりの頃です。「30秒くらいで消える小さなういるす型石けんを作りませんか」と、それだけが書かれていました。カズーさんの周囲の子どもたちが手を洗うのを嫌がる様子を見て、手洗いを楽しい時間にできないかと思いついたアイデアだったそうです。

僕は、純粋にすごく面白いアイデアだと思いました。こういう苦難の時こそ、アイデアやデザインで世の中に何かアクションを起こすのが僕たちの仕事だと思っていたし、実際に僕の2歳の子どもが日々いろいろなものを素手で触ったり口に入れたりするのを見て心配していたこともあり、ぜひやりたい!と手を挙げました。

僕と同じように複数のメンバーが手を挙げてプロジェクトがスタートしました。石けんを作るのが目的ではなく、子どもたちがウイルスについて理解する「教育」が目的なんだということを念頭に、ウイルスをどんなキャラクターにするか、30秒でいいのか、実際にどのように商品にするのか、イベントはどうするのかなど、みんなでブレストしてプランを固めていきました。

商品開発と販売に関しては、石けんを一緒に作れるパートナーを探し、生活雑貨などの企画製造販売をされている株式会社ドリームズさんに辿り着いてプレゼンさせていただきました。幸いにも、プロジェクトの趣旨に共感していただき、一気に開発を進めることができました。

「おれたちういるすPROJECT」誕生ストーリー

Q. 小島よしおさんが歌う「おれたちういるす」の歌は、どのように制作したのですか?

石けんの商品開発を進める中で、すごくいい商品になりそうな手応えはありました。でも、僕たちが目指しているのは、子どもたちへのウイルス感染予防の理解促進・手洗いの大切さを啓蒙することですから、ただ商品が売れればいいわけではありません。

これからは、新型コロナに限らず「withウイルスの時代」。調べていくと、ほとんどのウイルスが30秒の手洗いで流れていくことがわかりました。ウイルスは目に見えない恐ろしいものですが、対策をしっかり学んで徹底すれば、自分の身を守ることが可能なんです。それを子どもたちに伝えることが大切だと思いました。

そこで、子どもたちが好きになれる歌に乗せたら、みんな楽しく、自然に学べるんじゃないかと考えました。そうしてコピーライターの大石将平と協力し合い、6種類のウイルスの特徴を盛り込んだ歌詞ができあがりました。

誰に歌ってもらうのがいいだろう、といろいろと考えを巡らせた結果、教育YouTuberとして子どもたちに人気の小島よしおさんにお願いすることにしました。小島さんは、大学で教育を専門に勉強されていた方ですし、テレビやYouTubeでの活躍ぶりから、子どもたちに楽しく歌ってもらうためにぴったりの方だと思いました。このプロジェクトの趣旨にも賛同していただくことができ、小島さんのおかげてとても面白い歌を完成させることができました。

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Q. キャラクターや歌の歌詞を作るうえで気をつけた点は何ですか?

特に今はウイルスを扱うこと自体がとてもセンシティブなことなので、どのウイルスを扱うかと、誤情報にならないようにということには、すごく気を配りました。厚労省が出している情報を調べることはもちろん、医師や専門家の方にも意見を聞きながら慎重に進めていきました。

一方で、ただ真面目に伝えるだけでは子どもたちが口ずさみたくなるような歌にはなりにくい。そこで、人間目線ではなくウイルス目線の歌詞にして、ウイルスそれぞれの性格や特徴を知ってもらうことと、明るく楽しいトーン&マナーにすることにはこだわりました。ウイルス対策は真面目に語ると非常に重いテーマですが、悲観的なニュースばかりの時代だからこそ、明るく歌えるものにしたかったという思いもあります。

「おれたちういるすPROJECT」誕生ストーリー
「おれたちういるすPROJECT」誕生ストーリー

エージェンシーにとって新しいビジネスモデル

Q. ドリームズさんがパートナーになった背景を教えてください。

石けん開発のパートナーを探していたら、ドリームズさんのサイトで「タブレットソープ」を見つけました。まさにこのプロジェクトで作りたいものと近いと思い、ぜひお話しさせていただけないかと連絡しました。実際にお会いしたところ、社長さんご自身が子どもの頃にウイルスに感染し辛い思いをしたことから手洗いをする習慣をつけたこと、それ以降大きな病気にかかることが無くなったというご経験から、タブレットソープを作ったという経緯を教えていただきました。そして、この企画に共感していただいて、パートナーになっていただけることになりました。

ドリームズさんにとって、このような持ち込み企画は初めてだったとのことですが、快くお受けいただくことができました。これまでさまざまな広告を手がけてきたTBWA\HAKUHODOという会社への信頼ももちろんあったと思いますが、ドリームズさんが掲げている「アイデアのあるプロダクト」という会社のフィロソフィーにマッチしていたことも、賛同していただけた理由だったようです。

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Q. 広告エージェンシー(代理店)の仕事の多くはクライアントのニーズから創造していくものが主流ですが、「おれたちういるすPROJECT」は先に企画があり、それに合ったパートナーを見つけるという、主流とは逆の流れが新しいですね。

そうですね。通常の広告の仕事のようにクライアントさんからフィーをいただけるわけではないので、どのようにコストを抑え、利益を確保するかは大きな課題でした。

会社の仕事としてやっている以上、利益は出さなければなりません。その点からすると、今回は僕たちにとって初めてのことだらけだったので、何をするにも時間がかかり、トータルでかかる人件費が大きくなってしまうことが問題でした。人件費を抑えるために、短時間に区切って業務を行うなど、リソース分配をコントロールしながらなんとか乗り切りました。今後、このプロジェクトと同じようなビジネスモデルで利益をつくっていくなら、会社の中でこのようなプロジェクトを常にいくつか運営し、ノウハウを蓄積していって、効率良く進められる体制をつくることが必要だと思います。

ビジネスプロデュースの仕事に関わることは、会社としても可能性を広げられるし、社員のスキル向上においても良いことだと思います。というのも、今回のプロジェクトを通して、広告に関わる人たちの潜在能力の高さに改めて気づいたからです。

今回、僕たちのアイデアからプロジェクトがスタートしたので、商品企画からパートナー探し、実際の商品開発、パッケージデザイン、広告制作、商品PRまで、一貫して社内のチームメンバーで行う必要がありました。それでも、企画からキャラクター・歌づくり、ウェブデザイン、撮影、イベント企画・運用まで、広告会社には実にさまざまなことができる人が揃っていることに改めて気づきました。プロジェクトチームは、まるで精鋭ぞろいのスタートアップのようです。ですから、今後もこのようなプロジェクトを継続して実施していくことは、エージェンシーや広告業界に携わる人たちにとっての新たなチャンスだと思います。

Q. 大変だったことは何ですか?

商品をゼロから作るなんて誰も経験したことのないチャレンジだったので、あらゆることを一から勉強しなければならないことは大変でした。石けんの仕様はどうするのか、一箱にいくつ入れるべきか、パッケージ裏面の記載はどのように作成すればいいのか、商品の値段はどうするのか・・・などなど、ドリームズさんのアドバイスに助けられながらひとつずつ形にしていきました。リアル店舗で販売するための販路の確保や売り場づくりなどは、やはりドリームズさんのこれまでのノウハウや実績がなければ実現できないことでした。メーカーさんの仕事の偉大さに改めて気づかされましたね。

今回は、予算の都合上、ほとんど外注することができなかったので、なんでも自分たちでやらなければなりませんでした。たとえばスチール撮影もデザイナーの戸矢がカメラやキャプチャーワン(ソフト)を必死に勉強して、小島よしおさんの撮影も彼が行いました。ウェブサイトも、水本がWebを一から勉強して制作。子ども向けに歌詞や動画をつくるも初めてだったので、あらゆる子ども向けのコンテンツを見て研究しましたし、イベントも設営から段取りまで全て僕たちの手作りです。著名人のところへアンバサダーの契約交渉に行くなんてことももちろん初めてのことだったので、担当していた平久江は「俺がパンツ一丁になってでも契約を取ってくる!」と言って小島さんの元へ向かいました(笑)。結果的に、そんなことをしなくても小島さんには賛同していただけたので、良かったです。

大変だったことは確かですが、辛いとは思いませんでした。チームメンバーが学生時代に戻って文化祭準備をしているような、楽しい毎日でした。

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手洗いを通して、子どもたちの健康を守っていきたい

Q. やりがいや達成感を感じることはありましたか?

僕が個人的によく行く世田谷区の砧公園や東急ハンズの店頭で「POCKET SOAP」が売られているのを目にした時や、子どもたちが実際に「おれたちういるす」の歌を歌ってくれたり、「POCKET SOAP」で手を洗っている様子が見える時はやはり嬉しいですね。

「POCKET SOAP」を発売してすぐに、小金井公園で親子連れの皆さん向けに体験イベントを実施しました。すごく寒い日だったにもかかわらず、公園の手洗い場で子どもたちが楽しそうに手を洗ってくれているのを見て、このアイデアが間違ってなかったと思いました。体験してくださった方の中からは「いつもの手洗い時間は短かったことに気づいた」という声や、「30秒間きちんと手洗いすることでウイルスが流れていくことを初めて知った」という声が多かったことが印象的でした。「おれたちういるす」の歌や「POCKET SOAP」を通して、手洗いの大切さへの理解をもっと広げていきたいです。

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Q.今後はどんな展開をしていく予定ですか?

アンバサダーの小島よしおさんを招いて、子供たちに手洗いの大切さを知ってもらうためのイベントを企画しています。新型コロナの感染拡大が続いているので、リアルイベントにするかどうかは協議中ですが、みんなで楽しく歌いながら学ぶ場にできたらと思っています。

もう一人のアンバサダーであるてぃ先生から「30秒の大切さ」を語ってもらう動画を制作する予定もありますし、「おれたちういるすスクール」みたいな形で、手洗い方法やウイルスについて勉強するコンテンツなどを企画しています。全国の保育園・幼稚園で「おれたちういるす」の歌を歌ってもらったり、手洗いの啓蒙活動することも目標の一つですね。これらを実現するにはツールがもっと必要だし、「POCKET SOAP」の販売拡大も大事なので、プロモーションにも力を入れていきたいです。

「おれたちういるすPROJECT」誕生ストーリー

「おれたちういるすPROJECT」はまだまだ始まったばかりです。もっと多くの子どもたちや親御さんのお役に立てるように、チーム一同頑張ります。新型コロナの感染拡大は近い将来絶対に止まると信じていますが、それでも「withウイルス」の暮らしはこれからも続いていくので、手洗いの大切さはずっと変わりません。このプロジェクトを通して、一人でも多くの子どもたちの健康を守ることができれば嬉しいです。

TBWA\HAKUHODO「おれたちういるす」プロジェクトメンバーリスト

Executive Creative Director 佐藤カズー
Creative Director 伊藤裕平
Copywriter 大石将平
Copywriter 望月瑠海
Art Director 内藤彩
Art Director 水本隆朗
Character Designer & Photographer 戸矢渚
Head of Producer 平久江勤
Senior Producer 伊藤渉
PR Planner 橋本恭輔
Producer 佐藤右崇
Director 阿部慎利
Motion Designer 住吉清隆

「おれたちういるす」プロジェクトSNS

●プロジェクト 公式サイト 
https://www.weareviruses.com/
●POCKET SOAP 特設サイト 
https://www.weareviruses.com/pocketsoap/
●twitter 
https://twitter.com/weare_viruses
●Instagram 
https://instagram.com/weare_viruses

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これからも、TBWA\HAKUHODOのプロジェクトをご紹介します。お楽しみに!

広報チーム(koho@tbwahakuhodo.co.jp)