Talk Session 〜メンターシップからSisterhoodを広げていく〜 

21 April 2026

Talk Session 〜メンターシップからSisterhoodを広げていく〜 

TBWA\HAKUHODOには、Peace Piratesという、DE&Iについて関心を持つ社員たちが組織横断で集まった有志のグループがあります。2020年からの活動開始以来、「Gender Week」や「Pride Month」などの勉強会やイベントを企画・実施し、ボトムアップ型で人事設計やオフィス環境に良い変化を促してきました。そんなPeace Piratesが今年の国際女性デーに選んだテーマは、昨年に引き続き「メンターシップ」。社内で新たに始動した「女性メンターシップ制度」の進捗を軸に、博報堂のサステナビリティ企画部長、そしてTBWA\AustraliaのCEOという強力なゲストを迎え、国や組織の垣根を越えた対話が繰り広げられました。

登壇者紹介

Talk Session 〜メンターシップからSisterhoodを広げていく〜 

江村 千草(えむら・ちぐさ) 博報堂 経営企画室 サステナビリティ企画部 部長
博報堂グループ全体のDEI推進を牽引。自社内だけでなく、社外のリーダーをメンターとして活用する先進的なプログラムを設計・導入している。

キンバリー・ウェルズ TBWA\Australia CEO
TBWAグループ屈指の女性リーダー。”Take the Lead”プログラムなどのメンターシップを通じ、オーストラリアにおけるジェンダーギャップ解消の最前線に立つ。

米澤 香子(よねざわ・きょうこ) TBWA\HAKUHODO Head of Innovation
THにおけるメンターシップ制度の推進役。自身の経験から、若手女性社員が抱える不安を解消する仕組み作りを提唱している。

Talk Session 〜メンターシップからSisterhoodを広げていく〜 

ファシリテーター:岡 沙弥、合田 結内奈、濵田 真由美(Peace Pirates)

日本と広告業界が直面する、厳然たる「数字」の壁

セッションの冒頭で提示されたのは、日本が直面する厳しい現実です。世界経済フォーラムによる2025年版「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」において、日本は148カ国中118位。教育や健康面では高いスコアを記録しているものの、経済活動や政治参画の項目では依然として世界から大きく取り残されています。

広告業界においても、意思決定の場における多様性の確保が大きな課題となっています。こうした「構造的な壁」をいかに突破するか、その鍵として注目されたのが「メンターシップ」です。

「ああはなれない」という不安を「パーツモデル」で解消する

博報堂の江村氏は、2025年度からトライアルを開始した「社外女性リーダーとのメンタリング」の重要性を強調しました。

「社内に女性リーダーが少ないと、若手はどうしても限られた身近な先輩を『唯一の正解』として見てしまい、自分とのギャップに『ああはなれない』と感じてしまいがちです。そこで、あえて他社の女性リーダーと対話する機会を作りました。自律的にキャリアを築いている多様な方々の姿に触れることで、不安を軽減し、一歩踏み出すヒントを得てほしいと考えています。」

江村氏はさらに、「社外の人だからこそ、利害関係なく 悩みや不安を打ち明けたり 、客観的なアドバイスをもらえたりすることもあります。この『心理的な安全性』こそが、若手の背中を押すのです」と、仕組みの重要性を強調しました。

Talk Session 〜メンターシップからSisterhoodを広げていく〜 

これに対し米澤は、メンタリングから得た最大の収穫として「パーツモデル」という考え方を挙げました。「完璧な一人のロールモデルを探すのではなく、複数のメンターから『この人のこの部分は素敵だ』『この考え方は取り入れたい』とパーツごとに学びを得る。それが、自分らしいリーダーシップ像を形作る最短距離だと気づかされました。だからこそ、いろいろなパーツを取り入れられるように、多様な背景を持つリーダーの存在が必要なのです。」

江村氏も「女性一人一人それぞれに異なる状況やバックグラウンド、思考の違いがあり、自分とぴったり同じメンターはいません。複数の方との対話を通じて、逆説的に、自分のキャリアのオーナーシップは自分で持つこと、仕事をしていくなかで見つかるWILLを大事にしていくことを、メンタリングを通じて改めて気づいていただけたように思います」と続けました。

育休は「キャリアの空白」ではなく「MBA級の学び」

セッションで最も会場を沸かせたのは、育児休業に対するポジティブな捉え直しでした。

米澤は、スイスの調査データ(父親が1ヶ月育休を取得するごとに、母親の将来の収が7%向上する)を引用(*1)。 さらに父母ともに育児休業を取得することの価値を、こう断言しました。「育休の期間をブランクだと不安がる必要はありません。生活者の気持ちを深く洞察し、コミュニケーションを設計する私たちの仕事にとって、育児は お金を払って行くMBA留学と同じ、あるいはそれ以上に価値のある豊かな『学びの期間』です。社会全体でこれを『価値のある経験』と認め合える風土があれば、もっと自分らしくライフステージを楽しめるはずです。」

Talk Session 〜メンターシップからSisterhoodを広げていく〜 

勇気を持って「ボールを打て」

TBWA\AustraliaのキンバリーCEOは、グローバルな視点から、女性がリーダーシップを執る際のマインドセットについてパワフルなメッセージを贈りました。

「かつての伝説的なテニス選手が言った言葉に『Hit the damn ball(とにかくボールを打て)』というものがあります。チャンスというボールが飛んできたとき、多くの女性は『自分に打つ資格があるのか?』『完璧に打てるか?』と迷ってしまいます。でも、許可を待つ必要はありません。準備をして、前に踏み出し、その場を自分のもの(Own the room)にする勇気を持ってほしいのです。」

また、キンバリーCEOは自身の経験から、メンターシップの本質をこう定義しました。「メンターは答えを教える人ではなく、自信を分かち合う人。私が苦労したとき、先輩たちが『あなたならできる』と信じてくれたことが私の支えでした。今度は私がそれを次の世代に渡す番。このエネルギーの循環がSisterhoodの本質なのです。」

Sisterhoodは、すべての人が生きやすい「Humanhood」への入り口

セッションの終盤、議論は「女性の連帯」を越え、組織全体のあり方へと及びました。

キンバリーCEOは、「Sisterhoodは男性を排除するものではありません。女性が互いに支え合う姿を見せることは、男性同士のBrotherhood(男性同士の連携)のインスピレーションになりながら、女性と男性の連帯を築くきっかけにもなると思います」と語り、最終的には性別を越え、誰もが人間として尊重される『Humanhood』な組織こそが目指すべき姿である、との考えを示しました。

江村氏も、「TBWA\HAKUHODO、博報堂、そしてグローバルのTBWA。組織の枠を越えて知見をシェアし、多様なロールモデルを可視化し続けることで、誰もが『自分らしい働き方』を選択できる未来を作っていきましょう」と述べました。

今回参加したPeace Piratesメンバーとゲストの米澤さん、江村さん、Kimberleeさん(左)

今回参加したPeace Piratesメンバーとゲストの米澤さん、江村さん、Kimberleeさん(左)

Peace Piratesは、これまでの慣習にとらわれない新しいキャリアの形を、これからもボトムアップから提案し続けていきます。これからの活動にもご期待ください!