Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

13 February 2024

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

TBWA\HAKUHODOは、自らを「DISRUPTION®カンパニー」と呼び、「この社会に、意味ある変化をつくりだす」ことをミッションに掲げています。
そして、これを実現するために「DISRUPTION®」という哲学・メソッドを持っています。DISRUPTION®︎とは「創造的破壊」、つまり人々が無意識のレベルで囚われている「習慣」や「既成概念」を打ち破ってあるべき理想の姿へ向かうためのアイデアのことをいいます。

そして「DISRUPTION®」を社外の方にもご活用いただけるようオープンイノベーションプロジェクト「Open Disruption®」に取り組んでおり、DISRUPTOR(創造的破壊者)となりえる企業や団体とともに社会に意味ある変化を共創する仕組みを模索しています。

その一環として行っているDisruptionでつながるイベント「DISRUPTION® Lounge」の第3回目となるレポートをお届けします。

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

TBWA\HAKUHODOは「クリエイティブ・ルネッサンス」へのパラダイムシフトが起きていると考えています。
それは、老若男女も有名無名も関係なくすべての生活者がクリエイティビティを発揮する時代です。
実際に、生活者が発信するコンテンツが世の中を席巻する事例が次々と生まれるようになりました。
クリエイティブ・ルネッサンスが訪れると、カルチャーの生まれかたやブランドのありかたはどのように変わるのでしょうか?

【Disruption Lounge vol.003ゲスト】

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

Team Lead, Creative Solutions, Global Business Solutions, TikTok for Business Japan
松本 幸貴 氏

イベント制作会社にてキャリアをスタート。2019年4月よりTikTok for Business Japan へ参画。化粧品業界を中心に幅広い業種のTikTokを活用した広告キャンペーンに携わり、様々なマーケティング事例を創出。

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

株式会社AMF 代表取締役 SNSトレンドマーケティング協会 代表理事
椎木 里佳 氏

1997年、東京都千代田区生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。中学3年のときに株式会社AMFを創業。全国の女子中高生からなるトレンドリサーチチーム「JCJK調査隊」を率い、半年ごとの「JCJK流行語大賞」発表や企業のマーケティング支援に携わる。さらに一般社団法人SNSトレンドマーケティング協会の代表理事として各SNSの最新トレンドやSNSマーケティングのノウハウも発信中。最近の支援事例としてはサントリー『Bar Pomum』、高島屋など。2021年度よりNHK中央放送番組審議会委員(現在3期目)も務めている。メディア出演多数。

変化1:クリエイティブの民主化

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

かつて世の中にコンテンツを発信する立場にあったのは、クリエイティビティを発揮することを生業とした職業クリエイターでした。そして世の中の価値観は、マスメディアの影響を強く受けていました。ところが今では、生活者もクリエイターとしてクリエイティブなコンテンツを容易に発信しています。たとえば2023年の各流行語大賞でも、生活者が発信したコンテンツが複数ノミネートされていました。これが“クリエイティブの民主化”です。

このような”クリエイティブの民主化”が進んだクリエイティブ・ルネッサンスの時代に、生活者の目に留まる、もしくは、生活者に発信してもらうために、ブランドや企業は何を意識すべきでしょうか?

椎木さんは、生活者に発信してもらうためには「自己有用感」がキーワードになると考察。椎木さんのいう自己有用感とは、自身が面白いと思ったコンテンツの拡散や自身の推しである人やブランドの成長に役立ちたいという気持ちのことで、たとえば自発的にアイドルライブの切り抜き動画を作成する、店舗の営業時間など詳細な知識や体験が求められる質問にも積極的に答える、などといった行動に表れます。椎木さんによると「今の生活者は、大きなコミュニティの一員として自分がどう機能するかまで考えている」とのこと。さらに、自己有用感がベースとなって発信された情報は「他者への見せ方やバズといったことを目的としていないため、質が高く、生活者の共感の輪が広がりやすい」ともおっしゃっていました。
松本さんは、生活者の目に留まるためには「ことTikTokというプラットフォームにおいては、思わずスクロールを止めてしまうような感情を動かす工夫、もしくは新しい視点や期待感を持たせる仕掛けを冒頭に置くこと」が必要だと語りました。

変化2:カルチャーの多様化

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

過去を振り返ってみると2000年代以降、インターネットの普及にはじまり、SNS・コンテンツプラットフォームの誕生、モバイルデバイスやアプリの進化など、さまざまなテクノロジーの発展や環境の変化が起きてきました。さらに最近では、コンテンツがコミュニティ、国・地域や時代といった従来の単位を超越して拡散あるいは発見されるようになりました。
今後、カルチャーはますますシームレスで多様多彩なものになっていくでしょう。

TBWA\HAKUHODOでは、カルチャーを「人々の間で共有される考え方や価値観、参加したくなる潮流」と捉えています。カルチャーがよりシームレスに、多様に変化していく中でブランドや企業はどのようなことに留意するべきかをゲストにお聞きしました。

「コミュニケーションの相手は『人』であるため、どんなカルチャーが生まれているのかだけでなく、そのカルチャーの中で人がどう反応しているのか、それを動かしているトリガーが何かを見極める必要もあります。そのために様々なコンテンツや価値観に触れることが重要です。ブランドが持つべきは、柔軟にトライ&エラーをしようとする姿勢でしょう」と松本さん。
椎木さんは「ブランドが生活者の意見に耳を傾けているということを、細やかで濃密なコミュニケーションや明確なアクションを通じて示すことが大切でしょう。たとえば、生活者の投稿に返信したり、生活者の反応を根拠にした行動を起こしたりすることが挙げられます」とおっしゃっていました。

変化3:ブランドの大衆化

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

クリエイティブ・ルネッサンス以前のブランドは権威性を持っており、「憧れ」を提示することで世の中に存在感を示していました。しかし今では、ブランドやライフスタイルにはオルタナティブがたくさん存在します。これにより生活者はブランドのことを、自身の意思で付き合うかどうかを選ぶ「友達」のような存在だと見なすようになりました。

TBWA\HAKUHODOは、世の中でブランドが存在感を放っていくためには、競合他社だけではなく、生活者のカルチャーや、その根源となるコンテンツもライバルとして捉えていかなければならないと考えています。
クリエイティブ・ルネッサンスが進んだときに、ブランディングはどうあるべきでしょうか?

松本さん・椎木さんのお二人とも「ブランドが生活者にとってより親しみやすい存在になるためには、自ブランドだけで完結したメッセージを発信するのではなく、生活者もクリエイターとしてブランドアセットを活用できる仕組み、言い換えると生活者もブランドの発信者として参加できる仕組みを整えるなど、コンテンツ創作のエコシステムを提供する形に変化すべき」と語ります。その中で、ブランドと生活者が相互にコミュニケーションをとり、一体となって共創していくことによってブランドのイメージがブラッシュアップされていくと説明されました。

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~
Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~


Disruption Lounge Vol.3のモデレーターの視点

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

今回おふたりに伺ったお話をもとに、クリエイティブ・ルネッサンスによって起こる変化をTBWA\HAKUHODOのフレームワーク「Disruption Roadmap」に沿って考えていきましょう。この「Disruption Roadmap」には、Convention(コンベンション)、Vision(ビジョン)、Disruption(ディスラプション)という3つのステップがあります。

・Conventionとは:破壊すべき既成概念
・Visionとは:あるべき理想の姿
・Disruptionとは:既成概念を破壊し、ビジョンを実現するアイデア

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~

Convention(コンベンション)とは、世の中で無意識に受け入れられている前提や習慣化している考え方です。
これまで生活者は、消費という役割を期待されていました。権威あるブランド、マスメディアや職業クリエイターが生活者の憧れるべき姿を規定し、生活者はそれを叶えることを目指していたのです。生活者は一方通行で発信される価値観の虜になっていたとも言えます。ところが、現代ではそのような構図ではなくなりつつあります。ここから、ブランドが打ち壊すべきコンベンションは、「皆が同じ価値観を共有している」という考え方だと解釈できます。

Vision(ビジョン)とは、コンベンションを打ち壊した先にある、世の中のあり方です。
テクノロジーやプラットフォームの発展によって生活者も情報を発信できるようになったことで、生活者は主体性を発揮するようになりました。今や生活者とブランドの関係は対等になり、相互に影響を及ぼしあうようになっています。このようなエコシステムのなか、生活者は自らの価値観を探究・開拓していくようになるでしょう。よって、ビジョンは、「一人ひとりが価値観の別解を生んでいく」世界をつくることだと捉えられます。

Disruption(ディスラプション)は、ビジョンを実現化するアイデアです。
「クリエイティブ・ルネッサンス」の時代にブランドに求められるのは、「生活者の主体的なクリエイティビティを尊重する」姿勢です。世の中ではテクノロジーをはじめ様々な変化が起きていますが、それらは「生活者のクリエイティビティを現代に開花させる」という方向性が共通しています。
ブランドも、生活者が主体性を存分に発揮できるよう、生活者との関わりかたを変革していくべきでしょう。

Convention:「皆が同じ価値観を共有する」 生活者が権威の唱える価値観の虜になる世界
Vision:「一人ひとりが価値観の別解を生んでいく」 生活者が自らの価値観を探究・開拓していく世界
Disruption:「クリエイティブ・ルネッサンス」 生活者のクリエイティビティを現代に開花させる

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~


トークを終えて

今回のトークセッションを通じて強く現れたのは、生活者の「関わりたいブランドを自ら取捨選択する」という姿勢です。価値観の市場が自由になった一方、あまりにもさまざまな選択肢が生まれたことで、判断にかけられる時間が短くなっているようです。
一度目に留まればどんどん関わりを深めてもらえたりアンバサダーを務めてもらえたりするようになるが、逆に関心が持てないと思われたら瞬時に視界から消されてしまう。選択肢が増えすぎたからか一部の生活者には、もはや接した情報や商品のことを覚えきれなくなっていることを示唆する消費行動が現れています。
だからこそ、接触する際には「思わずスクロールを止めてしまうような」感情の揺さぶりや期待感を生むことが必要であり、関わる理由を示すためのコミュニケーションやブランドアクションが重要になるというのも頷けます。
また、生活者の主体性は、うまく活かせばブランドにとって追い風となります。SNSやコンテンツプラットフォームが誕生したことで、トライ&エラーを通じて生活者からフィードバックを得ることが容易になりました。それどころか、生活者の声やクリエイティビティをうまく活かせばブランドの更なるブラッシュアップさえ可能になったのです。そして、このナラティブともいえる対話が続いていくことで、ブランドを推す生活者の輪は次第に広がっていきます。
今後は、生活者を対等な存在として尊重し、生活者とともに未来へ歩んでいく勇気を持ったブランドが成長するでしょう。

Disruption Lounge vol.003 クリエイティブ・ルネッサンス ~これからのカルチャーの生まれかた~