“ダイバーシティについて、一緒に考えませんか?” – TH Peace Pirates

16 September 2021

“ダイバーシティについて、一緒に考えませんか?” – TH Peace Pirates

STORIESでも紹介させていただいた、今年3月のGender Weekと6月のPride Monthは、TBWA\HAKUHODOの中でさまざまなダイバーシティ推進活動を行っている有志グループ「Peace Pirates」が企画・運用したイベントで、ジェンダーを含むいろんなダイバーシティのテーマについて社内で一緒に考え、話し合うきっかけとなりました。

今回のSTORIESでは、そのPeace Piratesの創設メンバーで、リーダーであるエリック・エレフセン(Eric Ellefsen)さんにお話を伺いました!
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Q. 簡単にエリックさんご自身について教えてください。

ノルウェー人の父と日本人の母との間に生まれ、大学の卒業後はピースボードという世界一周する船旅を企画するNGO Peace Boatで12年間働いていました。TBWA\HAKUHODOには6年前に、知人の紹介で入ることになり、今はトランスクリエーション(Transcreation)という専属の翻訳・通訳チームでディレクターをしています。
TBWA\HAKUHODOで「翻訳チーム」という名称ではなく、「トランスクリエイションチーム」という名前を使っている理由は、通訳・翻訳は言語や文化間の架け橋になるため存在だとという考えからです。広告コピーやプレゼン資料などを単純に直訳すると逆に意味が通じなくなることもありますし、会議などでお互いの立場に配慮しないといけない場面も多々あります。われわれのチームはカルチャーという視点やその状況を見て、言葉の形に囚われず、本質なところを捉えられるような架け橋づくりを目指して、ある意味「クリエイション」しているので、そのように名付けています。

“ダイバーシティについて、一緒に考えませんか?” – TH Peace Pirates

Q. Peace Pirates とはどんなグループでしょうか?

正式な部署ではないのですが、20名ほどDEIに熱意を持つメンバーが集まった有志のグループです。所属部署や役職などは関係なく、社内サークルのようなイメージが近いかもしれません。
DEI(Diversity, Equity, Inclusion)について社内向けの啓蒙活動などを通じて考えるきっかけを作ったり、会社のハード・ソフト両面を充実・改善する提案をしていくことで風通しのいい環境を作ることに貢献したいという想いで集まっているグループです。

Q. Peace Piratesの始まりについて聞かせてください。

TBWA\HAKUHODOには世の中の流れを常に意識する風土があって、業務とは別で自分の考えやアイディアを自由に話し合って考えるカルチャーがあります。そのコミュニケーションツールの一つとして、TBWAグローバルネットワークで利用しているワークプレイス(Facebookの会社版)があります。そこで自分の考えを発信したり、フォローし合ったりしている人がいますが、それがきっかけで周りとの会話が生まれたり、考えさせるきっかけとなることも多々あります。僕も2~3年前から、一人の生活者として広告に対して感じることや、ジェンダーや先住民のアイヌ族などダイバーシティの問題に対する考えなどを書き始め、周りにもフォローされるようになりました。

“ダイバーシティについて、一緒に考えませんか?” – TH Peace Pirates

そうしていたら、2019年の国際女性デーの際、TBWA Asia Pacificの広報からお声掛けをいただいて、アジアのマーケティング・クリエイティブ業界で最大のメディアとなるCampaign Asiaに、僕が書いた記事が載せられました。女性のアイデンティティの選択肢を広めるのは広告の役割だという趣旨の記事でしたが、Campaign Japanにも翻訳版が載せられました。
それがきっかけで社内でも周囲と議論する機会が増え始め、どんどんDEIに関して熱意を共有すしるメンバーたちが集まって話し合う場を設けたのがPeace Piratesの始まりです。
タイミング的に、TBWAのグローバルネットワークからもBlack Lives Matterへのサポートやリーダーポジションのダイバーシティ推進を強く表明していて、TBWAネットワークの各地域にも、DEIをより積極的に推進していこうという動きになっていた時期でした。

Q. Peace Piratesという名前の由来を聞かせてください!

最初メンバーで名前について話していた時に、DEIに関わるさまざまなテーマがある中で、根源的なキーワードとして誰かから「Peace」という言葉が出てきました。ダイバーシティが認められる環境こそ真のピースだ、と。しかも「そういえばエリックはPeace Boatにいたしね」ということでPeaceという単語が決まりました。「Pirates」は、常識を打ち壊す精神、海軍ではなく海賊になりやがれ、というTBWAのDNAで我々を呼ぶ言葉でもあるので2つを組み合わせた造語に落ち着きました。

Q. そんなPeace Piratesは今までどのような活動をしてきたのでしょうか?

去年までは各自業務ある中で、月に一度集まってさまざまなDEIの課題や広告事例を持ち寄ってディスカッションすることで、グループのアイデンティティが形成されていきました。
2020年の後半からTBWA\HAKUHODOのマネジメント層とも会話し、Peace Piratesが目指すゴールに共感を得ることができました。2021年初の全社会議で正式に社内の有志グループとして発表することとなって、そこから活動の量を増やしていきました。

Q. 正式にデビューをして最初に行ったことはなんですか?

“ダイバーシティについて、一緒に考えませんか?” – TH Peace Pirates

やはり、Gender Gap Indexで日本が121位で前より順位が下がっていることから、「ジェンダー問題」はPeace Pirates的に最も重点を置いて考えていきたいトピックです。そこに対して、3月の国際女性デーをきっかけに、一週間全社でジェンダーについて考える「Gender Week」を開催し、さまざまな業界でDisruptionを起こしている方々に登壇していただくDisruptor Seriesを設けました。個人的にとても刺激と思ったセッションは、「パリテアカデミー」の共同代表お二人をお招きし、現在の日本が抱えているジェンダー課題について政治的・学問的に語っていただいた時間でした。そのほかには、博報堂キャリジョ研とのコラボでセミナーを企画したり、毎日DEIレターを配信したり、さまざまなコンテンツを配信していることで、参加していただいた社員からもとてもいい評価を受けました。

また6月はPride Monthとして、Gender Weekと同じくゲストスピーカーを呼んでセッションを行ったり、社内の本好き社員が集まっていたTH LIBRARYというグループと初めてコラボしたりして、より多様な参加者とイベントを作り上げることができ、さらに充実な1ヶ月になったと思います。

Q. 大きなイベント以外にも手掛けたことはありますか?

“ダイバーシティについて、一緒に考えませんか?” – TH Peace Pirates

月に1度、「UnLabeling Salon」と私たちが呼んでいる取り組みをGender Weekのあとから引き続き行っています。ディスカッションのあとはレポートを作成して、全社展開しています。
あとは、月経衛生の日にちなみ、弊社の今井社長が過去営業だった時代に、生理用品ブランド担当していたこともあって、会社で生理について行ったアンケート結果に対して社員と一緒に話しながら、過去に未知の世界だった生理と向き合う日々の経験を話し合う時間を作ったこともありました。驚くことにたくさんの社員が参加してくれて、男女問わず「こういう話をみんなの前でしてくれてありがとう」とメッセージをもらえてとても嬉しかったです。そのイベントがあった日から、オフィスの全ての女性トイレにいつでも使えるように生理用品を整備することになるなど、小さくても確実な変化を少しずつ起こしています。

Q. 活動を通じて達成したいこと、Peace Piratesのミッションはなんでしょうか?

風通しをよくする、というのが意識していることですね。
特に日本の風土ではあまり個人の意見を述べないで、やるべきことをこなすことが美徳というイメージがあります。「押し付けてはいけない」という気配りから来ているのかと思いますが、さまざまな社会課題がある中、われわれの役割は、波紋を投げかけてそういったことに対して改めて「一緒に考えようよ!」というきっかけや機会を創り、優しい風を吹かせることだと思っています。「これが正解だ」と押し続けるのではなく、ですね。
クライアントからも消費者からもDEIに関する関心が高まっている中で、社内の人たちがDEIについて考え、議論を活性化させていこうという、エナジャイザーとしての役割も果たせればと思っています。

Q. Peace Piratesで活動してきて、周りに感じる変化は何かありますか?

元々、クリエイティブを通して問題に対するソリューションを創造していきたい人々が集まっているエージェンシーですのでPeace Pirates以前にも社会課題に対するソリューションを提供するようなクリエイティブを多く世に出しています。Peace Piratesの活動が変化として与えてくれているのはクライアントのブリーフ以外で社内にて社会話題についてざっくばらんに会話できる風土を作っている、ってところだと思います。それが変化かな。本当はすでに潜在していた社員の熱意、考え、心に光を当てただけなのかもしれません。
自分一人だけだったらただ考えを書き出すぐらいなのが、チームとなってアイディアが膨らみ、刺激し合って新たなものが育まれて、みんなの力も伸びる、ということを実感できて個人的にとても嬉しいです。

Q. Peace Piratesとして目指しているゴールや今後チャレンジしたいことはありますか?

今後も社内で、小さくても確実な変化を少しずつ起こしていきたいと思います。例えば人事局とコラボレーションしたり、施設面でもっと包括的な空間作りができないか総務部と連携したりとか、社内各部署と連携を取りながら進めていきたいです。
DEIには、LGBTQIA+や在日外国人、ジェンダー、世代格差などさまざまなトピックがあるのでどうやって風通しよく、隔たりなく会話できる環境を作るか?について継続的に話し合うきっかけ作りをしたいです。こういうことを言っちゃいけないよね、と他の人にも他の意見があって自分の意見を胸に収めるのも他人への配慮として良いですが、競争力のある未来のためにも、人を思いやりながらも持っている意見を述べることの重要性を訴えていきたいですね。

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今後もPeace Piratesの活動をSTORIESで紹介していきますので、ぜひお楽しみに!

広報チーム (koho@tbwahakuhodo.co.jp)