Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜

27 June 2025

Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜

6月はPride Month。LGBTQIA+コミュニティを祝福し、多様性とインクルージョンを改めて考えるこの機会に、TBWA\HAKUHODOでDEIに関心を持つメンバーによる有志グループ『Peace Pirates』は、オンラインで特別なトークセッションを開催しました。


セッションのタイトルは「How DEI accelerates meaningful social change(DEIが社会に意味ある変化を加速させる)」。スピーカーには、TBWA\ITALIAでDEI推進を牽引するStefano Lombardiさん、そしてTBWA\HAKUHODOで「PRIDE FILTER」などのプロジェクトを手がける鈴木賢史郎を迎え、日本とイタリアそれぞれの視点から、今なぜDEIが必要なのか、そして企業にできるアクションについて語り合いました。

登壇者紹介

Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜

Stefano Lombardi(ステファノ・ロンバルディ)
TBWA\ITALIA クリエイティブ・ディレクター

1987年生まれ。13年間の広告業界経験を経て2020年にTBWA\ITALIAに入社。イタリア初のDEIに特化したコミュニケーションチーム「The Callective」を立ち上げ、マイノリティや社会的に取り残された人々を対象にしたインクルーシブなプロジェクトを多数展開。これまで担当したクライアントはMicrosoft、Nivea、Save the Children、BMWなど。

Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜

鈴木 賢史郎(すずき・けんしろう)
TBWA\HAKUHODO クリエイティブ・ディレクター

プロダクトやサービス開発を担うInnovation Hubに所属。 Peace Piratesのメンバーと共に、同性婚に賛成している議員が一目でわかるフィルターアプリ「PRIDE FILTER」をリードするなど、 DEI関連の取り組みを社内外に広げている。

イタリアと日本におけるDEIの現状

Stefanoさんは、イタリアにおけるDEIの社会的な課題を具体的なデータとともに紹介しました。

「イタリア人の66%がこの社会を公平ではないと感じており、LGBTQIA+当事者の51%がハラスメントを経験していると訴えている現実があります。一方で、多くの国民が同性婚を支持しており、DEIに関心がある企業の商品を積極的に選ぶという調査結果も出ています」

こうした状況を受けて、Stefanoさんが立ち上げたのが、社内横断型のDEI専門チーム『The Callective』。広告の力を使って社会の包摂性を高め、社会から取り残されがちな人々とブランドをつなげることを目指しています。チーム名は“collective”をベースに、“すべての人”を意味する“all”を組み込んで再構成された造語です。視覚障がい者のためにレインボーフラッグを音で感じられる「The Sound of Pride」や、暴力を経験した女性たちを支援するアンバサダー育成制度を社内に導入するなど、社会的マイノリティへのアプローチを多角的に展開しています。

Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜
Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜

鈴木は日本における現状として、「国民の7割以上が同性婚に賛成しているのに、政治の場では反対意見が主流であるという大きなギャップがある」と言及。多様性への理解と制度化の遅れという、日本特有の課題を浮き彫りにしました。そこで鈴木が手がけたのが『PRIDE FILTER』のプロジェクト。スマートフォンを使って選挙ポスターをスキャンすると、同性婚に賛成する候補者がレインボーカラーで浮かび上がるというものです。2024年の衆院選で全国展開され、賛成議員を多数派へ押し上げる一助となりました。

Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜

意味ある社会変化を生むために、どんなアプローチが有効か?

DEIのアイデアをクライアントと実現していくことには難しさも伴います。

Stefanoさんは「DEIを社会課題というより“マーケット機会”として捉えることで、ブランドやクライアントが前向きに取り組みやすくなる」とコメント。「私たちエージェンシーがクライアントのDEIコンサルタントのような存在になるべきです」

鈴木は、自身が立ち上げたPRIDE FILTERのプロジェクトを例に、「いきなり最終ゴールを目指すのではなく、小さな成功体験を積み重ねていく“段階的アプローチ”が有効」と語りました。「同性婚の法制化という大きなゴールは変えず、まずは“どの候補者が同性婚に賛成しているのかを一目でわかるようにする”という具体的な課題に落とし込むことで、世の中を一歩動かすことができたと感じています」

なぜ私たちが「Pirates」としてDEIを推進するのか

TBWAが掲げるDisruption®を象徴するのが「Pirates(海賊)」カルチャー。Stefanoさんは、「ローザ・パークス(*)の行動が民権運動のトリガーとなったように、小さな一歩が大きな社会変革を生むものです。今起こす責任が私たちにはあると思います」 と述べます。

鈴木も「TBWA\HAKUHODOは『意味ある社会変化を創り出す』をパーパスに掲げている。理屈や正しさだけでなく、“楽しくて勇敢”なやり方で社会に変化を起こすことが私たちの使命」と強調しました。

(*) ローザ・パークス:1955年、米国南部でバスの座席が白人と黒人で分けられていた時代に、白人に席を譲ることを拒否して逮捕された黒人女性。その行動が全米の公民権運動を促すきっかけとなった。

これから取り組みたいこと

セッションの最後には、2人が今後取り組みたいプロジェクトについて語りました。

Stefanoさんは「トランスジェンダー当事者を肯定的に描き、偏見や恐れではなく光を当てるような表現を実現したい」と抱負を語りました。

鈴木は「7月の参院選に向けてPRIDE FILTERをさらにアップデートしたい」と語り、社会に対して具体的な変化をもたらすツールとして、さらに発展させていく意欲を示しました。

クリエイティビティと旗を掲げ続ける

セッションを通して語られたのは、「小さな一歩」の大切さでした。DEIという大きなテーマも、いま目の前でできるアクションから始まります。社会の風向きが揺れるいまだからこそ、私たちは“海賊”として、Disruptiveなスピリットを胸に、多様性の旗を掲げ続けなければなりません。

楽しく、勇敢に、そしてクリエイティブに。私たちにしかできない方法で、意味ある変化を生み出していく。そんな前向きな意志が共有されたセッションとなりました。

Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜
Talk Session 〜DEIが「社会に意味ある変化」を加速させる〜

Stefanoさんと鈴木が出会うきっかけとなった研修風景と、交流を深めた日の様子



Peace Piratesは、今後もこうしたトークセッションや社内外のアクションを通じて、誰もが安心して自分らしくいられるカルチャーづくりを目指していきます。